この祭りに欠かせないのが3つの「G」です。そのGとは、手袋(Glove)、ガチョウ(Goose)、そして生姜(Ginger)のことをさしています。
手袋には、本来決闘を申し込むという意味がありますが、左手の場合、市場に店を開く許可の印として成り立っています。
この時期は遠方から商人が多くやってきます。祭りに繰り出る人の目を止まらせるような品物をいっぱい持参してくるからです。
普段はきちんとした出店許可証がないと露店を開く事ができませんが、この祭りに限っては左手の手袋だけで済むのです。
ミカエル祭の月に入ると巨大な手袋が街中にお目見えします。
ガチョウは、この時期収穫しやすい鳥で、饗宴などの主食として登場します。一度ローストしたガチョウに丁寧に羽を付け直してあたかも生きているような感じに見立てます。(この事をイリュージョン・フード{illusion food}と呼びます)
生姜は料理の中に添えられる薬の一つとして登場します。(今日でもあるジンジャーエールは中世からのなごりです。
現在ほど甘くはありませんでした)中世の頃、生姜は最も効く薬として重宝されていました。
生姜がこの祭りに組み込まれた理由は諸説ありますが、偉大な天使捧げる供物の1つとして成り立っていたのは間違いなかったようです。
ちなみに饗宴の上では生姜を使った料理(ビール、クッキーなど)がよく出てきます。
饗宴の料理は特に普通のコースですが、前述にあった生姜と鳥の料理を組み込んだスタイルとなっています。ここでは写真を踏まえてご紹介しますね。
右図が聖ミカエル祭の饗宴に出されていた一般的な食事です。
少々少な目の内容ですが、実際はこの2倍以上の品目が出されていました。
(通常は10食以上と言われています)
ここの食事の特徴は、生姜の料理と鶏の料理が出されている点です。
ちなみに、今回の料理は以下の通りです。
きゅうりのシナモン和え
鶏肉の甘辛煮
果物(レモン・オレンジ・リンゴ)
ジンジャーエール
花のプティング
生姜(すりおろして使用)
これは、普通の鶏肉を甘辛くした「鶏肉の甘辛煮」です。 実際は、鵞鳥のローストなども登場しましたが、このような小さな逸品も多々出てきました。 また、このような小さな料理は、「トレンチャー」と呼ばれるパンの皿の上に載せて一緒に食したものでした。 トレンチャーは、当時の皿の代名詞とも主食は何といっても鶏肉、特に鵞鳥の肉を好んだ料理が多く登場しました。 言えるもので、殆どの饗宴の上に出されました。片づけが楽だし、何よりも残らないというのが最大のメリットでした。 |
上:トレンチャーはこのように 物を上に乗せて食していた |
また、この祭りで重要な飲み物が「ジンジャーエール」です。 皆さんの世界でも今日存在するものと聞きましたが、この時代のエールは少々質が悪かった事もあり、皆様が知っているような味ではありませんでした。 生姜の味がぴりっと効くものでしたしね。(悪酔い、という事はなかったようです) エールはビールの下に位置するアルコール類で、安価なことから多くの民衆が夜の飲み物として愛されていました。当然、ビールより安いのですから味もちょっと落ちますが・・・ 中世の民衆、特にギルド(商工機関)関係の人は昼から飲んでいた、という記録もあります。 そんなにがふがぶ飲むのではなく、たしなむ程度なので酔っ払っている人はそう見かけません。 この時代の人間はお酒に強いという事でしたし。 (左: 当時の「エール」は左図のように少々茶色を帯びていたと言われる) |
デザートは、一般の饗宴でもよく見かける「花のプティング」です。 牛乳とビーフストック(現在のコンソメのようなもの)を混ぜ合わせて作ります。味はシナモン風味、といった所でしょうか。ビーフストックには凝固作用があるので、適度に牛乳を加える事が大事です。貴族達はよくこのプティングを食していました。お気に入りの1つでもあるようで、リデラ様も召し上がっています。デザート、といっても完全に甘いものではなく少々塩がかっている感じのものが多いですね。 (左:プティングなどのデザートは、季節の花を上に乗せて季節感を出していた) |