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〜過去の記録を記して/羊皮紙について〜


今日、私達が中世の文献をしる上で重要なもの。それは当時の状況をことこまか に記録した史料です。マヤ文明やアステカ文明のように、壮大な建築物があっても当時どのような生活をしていたのかなど知ることが難しくなっています。古来 永代まで残るものに文字を書き、絵を記すことによって先祖がどのように暮らしていたかを理解することができます。
仮に中世ヨーロッパの時代に「紙」がなかっ たら、現在のファンタジー世界は構築できなかったのかもしれません(^^;)。

さて中世の時代で使用された記録媒体ですが、専ら羊皮紙(ようひし・ Parchment)を使用していました。古代エジプトから伝わっているパピルス(葦でつくった紙)もありましたが、痛みやすくすぐにボロボロになってしまうことか ら次第に羊皮紙へと転向していきました。
羊皮紙はその名の通り、「羊の皮」でできた紙です。子羊の皮を水につけて、石 灰乳(水酸化カルシウムの懸濁液)で余分なものをおとします。木枠で乾燥させ 、表面をなめして鉱物の粉をすりこむと不透明な、しっかりとした紙ができあが ります。 大きな特徴としては、丈夫でおりまげるのに適していること。そのため専ら修道院で使われていました。

当時修道院=図書館のような存在でしたので、貴重な資料などはすべて修道院に収められていました。 原本はをさすがに持ち出すわけにはいかなかったので、「写本」と呼ばれるもの が多くでまわるようになるのは中世中期頃になってからでした。写本はほぼ忠実 に原本を再現したもので、「写学生」と呼ばれる専門の人達の手によって手書き で行われていました。

ご存知の方も多いと思いますが、この時代は文字を読み書きできる人が一部に限られており、とかく文字を写すことができる人はとても重 要な存在でもありました。 日本の古文書と違い、中世ヨーロッパの本は豪華絢爛な装飾・ダイナミックな文 字・色彩鮮やかな挿入絵が大きな特徴です。それらを写本化して貴族達に販売す ることによって収入(もちろん修道院としてのですが)を得ていました。現在でも多くの写本が残っていますが、何らかの原因で原本が消失してしまった際、写本は大変貴重な存在になるわけです。

余談ですが、ファンタジー小説などで修道院などに保管されている貴重な資料 (主に原本など)を外に持ち出す場面がたまにあると思いますが、ただでさえ盗難が多い時代だっただけに厳重に鎖で繋げていたため容易に持ち出すことはでき ません。閲覧は可能ですが、その場で見るしかなかったようです。
修道院が管理している本も、自分が所持している他の本を担保にだすか一定の使用料を払わなければ持ち出すことができませんでした。今の図書館の貸しだし手続きに似ていますね。


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