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〜聖なるものは、聖なるご加護の元に/聖遺物の行方〜


プレイステーションソフト「クーデルカ」(サクノス:PS)の中で、「聖ダニエルの右腕」という聖遺物が登場します。これは、この物語の舞台である修道院の 創設者・ダニエル=スコトゥスの実際の右腕、という設定になっています。最初 は石像かなにかの手かと思ったのですが、ミイラ化したようなものでした。

ちらほらと耳にする「聖遺物」ですが、これは「聖人」と呼ばれる、神と人間の 間に立つ人々が遺した身体や所有物のことを指します。神に清められた聖なるも のとして絶大な力を持つとされていました。 聖遺物は現在でも各地に残っています。ピンとくるのがイタリアのトリノにある サクラ・シンドネ(聖骸布)。イエスキリストが十字架にかけられた後にくるん だ布で、はっきりと本人の顔や血の跡が残っているというものです。これについ ては実に謎だらけではっきりとしたことがわかっていませんが、現在も調査が進められているとのこと。テレビなどでもよく特集にあげられていますね。(※)

中世の時代も同様に「聖遺物」が各地にありましたが、他の時代とちょっと違う点があります。それは「過剰聖者崇拝」。当時はキリスト教が全体に広まってい たこともあり、”聖者の持ち物を持ちたい・見たい”という願いが多くありまし た。教会側も、料金をとって公開すれば人がどっと押し寄せて莫大な資金が手に入る、売却すれば法外な値段で取引されるというおいしい話(?)に乗ってしまいました。聖遺物=金のような存在となったわけです。

また、一人の聖者が殉教すると、弟子たちは恩師の身体をこまかく切り分けて自分のものにする、または欲しがっている人に売りつけるなどしていたようです (ほんとに弟子?と疑問視したくなりがちですが)。 となると、当然現れてくるのがそれらを狙う「窃盗団」。聖者の墓を掘り起こし、 遺体はおろか、埋葬した土やそこに流れた雨水までも持ち出して売りつけていたというのですから驚きです。

こうなってしまっては収拾がつかず、12世紀に入ってとうとう教皇側から「聖遺物売買禁止命令」がくだされました。これによって、殉教者達は安らかな眠りに 再びつくことができたわけです。 いろいろなところに持ちこまれたり切り刻まれたりと、天に昇っている殉教者達 の気持ちをお察しするばかりです。

※シンドネについて:最近の炭素調査によって偽物であることがほぼ確定したそうです。ただ、現在でも「本物だ!」という方が多数おり、論議の最中とのこと。


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