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〜ちょっと違った魔女処刑?/意外な国の意外な事情〜


この手の話題をとりあげると、だいたい若干のグロテスクさが現れがちですが(苦笑)今回は火刑についてのお話です。

「火刑」と聞くと思い浮かぶのが、「オルレアンの少女」ジャンヌ=ダルク。フラ ンスを栄光に導きながら、魔女として異端視され、最後には火刑に処されてしまうという悲劇のヒロインです。 火刑にかかったその他の有名人としては、チェコの英雄ジャン=フス、埋葬後に火 にくべられてしまったイギリスの司祭ジョン=ウィクリフなどがあげられます。
彼等の大半の罪名は「反信仰」、または「性冒涜」でした。火刑に処する理由としては、「地獄の業火を味わう」という意味あいを持っていたようです。
ヨーロッパ各地で若干の差はありますが、大体の場合大量の薪を受刑者の周りに置いて、火をつけて煙による窒息死をさせるものです。長時間熱い火に燻されながら死を迎えるわけですから、相当な苦しみだったのでしょう。 ただ、薪が燃え尽きても生きながらえる人もいたので、その場合は槍などで絶命させていたようです(当時の挿絵を拝見すると、けっこうなものになっておりま すが… 汗)。

魔女の火刑を積極的に行っていたのが、ドイツ、フランス、イギリス、そして意外なところでスイスでした。特にスイスについては、当時の宗教分布地域が異なっ ていたこともあり、ヨーロッパの国々から「もっとも異端者がいる国」として恐れられていました。 というのも、当時のスイスにはカトリック(旧教)・プロテスタント(新教)・カト リックとプロテスタントの混合という、3つの派閥が存在していました。また、使用している言語も、イタリア・フランス・ドイツ・ロマン語と複数の言葉を使っていました。こうなってしまうと、他の国からきた人から見ればすごくチャラン ポランな感じにみうけられたのでしょう。

スイスの魔女裁判・火刑についても他国と微妙に違っている点があります。まず は、逮捕件数が多いわりに処刑実数が少ないこと。当時の裁判官は、処刑の意味に疑問を感じていた人が多かったようで、実際に処刑した、という数はかなり少なかったようです。同じ時期にイギリス・エセックス地方で行われた魔女処刑の割合をみても、圧倒的に少ないという記録が残っています(ただし、一部の地域では、逮捕したほとんどの人間を処刑していたとされます)。

もうひとつは、逮捕する理由が「疫病に関連している」ということ。他国ではサ バト(悪魔の儀式)に参加した者・呪いをかけた者などが逮捕・起訴される対象で あるのがほとんどでした。スイスの場合、当時よく流行っていた疫病をふりまく根源であると認識されていたようで、それが主な逮捕する主な理由となっていました。
現在は永世中立国として君臨しているスイスですが、過去にそのような事実があっ たと思うと、ちょっと意外といえば意外でしょうか。


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